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EC市場の拡大に伴い、配送の最終工程で発生している「ラストワンマイル問題」が注目されています。ドライバー不足や再配達の増加など、物流の現場が抱える課題は深刻です。本記事では、その背景と解決策をわかりやすく解説します。
ラストワンマイルとは
ラストワンマイルとは、物流の中でも「消費者に商品を届ける最後の区間」を指します。たとえば、倉庫や配送センターから個人宅やオフィスへ商品を届ける部分が該当します。距離としては1km前後の短距離であっても、配送先が多く、ルートが複雑なため、非常に手間とコストがかかる工程です。
ECサイトで商品を注文した際、「出荷完了」から「自宅に届くまで」の区間がまさにラストワンマイルです。近年では消費者の利便性向上に伴い、即日配送や時間指定などのニーズが増え、この部分の負担が急激に増しています。
ラストワンマイル問題とは
ラストワンマイル問題とは、この最終区間における非効率やコストの増大、人手不足など、配送現場で発生している複合的な課題を指します。特にEC取引の拡大によって小口配送が急増し、従来の配送網では対応しきれないケースが増えています。
都市部では渋滞や駐車スペースの不足、郊外では距離の長さや再配達率の高さが問題となり、どちらも配送効率を大きく下げています。こうした現状を放置すれば、物流コストが上昇し、最終的に商品価格やサービス品質にも影響が及びます。ラストワンマイル問題は、EC業界全体にとって避けて通れない経営課題といえます。
ラストワンマイル問題が深刻化する理由
配送ドライバー不足の現状
ラストワンマイル問題の背景には、慢性的なドライバー不足があります。国土交通省の調査によると、物流業界の人手不足率は全産業平均を大きく上回っており、特に若年層の新規参入が少ないことが課題です。配送は体力的負担が大きく、再配達や細かい時間指定などで業務量が増加しているにもかかわらず、労働環境の改善が追いついていません。結果として、1人あたりの負担が増し、離職率が高まる悪循環が続いています。
出典:
国土交通省「トラック運送業の現状等について」
https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf
国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/re_delivery_reduce.html
再配達率の高さとコスト負担
再配達もラストワンマイル問題を深刻化させる要因の一つです。国土交通省の調査によると、国全体の再配達率は約8.4%といわれています。「宅配ボックス」「置き配」など多様な受取手段の普及により改善傾向にあると考えられるものの、それでもなお8%台という水準は、配送業務全体の効率を大きく下げる要因となっています。1回の再配達で発生する時間・燃料・人件費は企業のコスト負担に直結します。また、受け取り側の不在や連絡の遅れなど、顧客行動にも左右されるため、完全な自助努力では解決しづらい構造的課題となっています。
出典:国土交通省「令和7年4月の宅配便の再配達率は約8.4%」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000908.html
都市構造と交通渋滞の影響
都市部では渋滞や駐停車スペースの確保が難しく、短距離でも配送時間が延びるケースが多くあります。マンションなど集合住宅への配送では、セキュリティ制限やエレベーター待ちなど、物理的な制約も増加しています。一方、郊外や地方では配送距離が長くなり、燃料費がかさみます。どちらの環境でも、ラストワンマイルの非効率な配送は、現場の負担として現れています。
ラストワンマイル問題の具体的な課題
人手不足と長時間労働
配送ドライバーの人手不足は、労働時間の長期化や過重労働を招きます。特にECの繁忙期やセール時期には、通常の2〜3倍の荷量を扱うケースもあり、現場の負担が大きくなっています。2024年に施行された「物流の2024年問題」(働き方改革関連法による時間外労働の上限規制)により、長時間労働の是正は進みつつありますが、その一方でドライバー不足や配送遅延のリスクが顕在化しています。
人手を増やすだけでは解決が難しく、物流効率化・自動化・共同配送の推進といった構造改革が急務です。
さらに、業界では「2030年問題」として、ドライバーの高齢化と人材確保の難化が次の大きな課題になると見られています。
持続的に物流を支えるためには、デジタル化による生産性向上と、働きやすい職場環境の両立が欠かせません。
配送効率の低下とコスト上昇
消費者の利便性を優先した結果、時間指定や個別配送が増加し、配送効率が下がっています。1件あたりの配送単価は変わらないため、燃料費や人件費の増加が企業の利益を圧迫します。また、細かなルート設計や顧客対応の負担も増し、結果的に生産性の低下につながっています。
環境負荷とサステナビリティ
再配達や小口配送の増加は、CO₂排出量の増大にもつながります。サステナブルな社会の実現が求められる中で、物流業界も環境負荷軽減への取り組みを避けて通れません。環境対応はコストではなく、企業価値を左右する要素となりつつあります。
ラストワンマイル問題を解決する新しいアプローチ
共同配送・置き配・宅配ボックスの活用
複数の事業者が配送網を共有する「共同配送」は、効率的な解決策として注目されています。エリア単位で配送をまとめることで、1台あたりの積載率を高め、CO₂削減にもつながります。また、再配達を減らす取り組みとして「置き配」や「宅配ボックス」の活用も広がっています。特に集合住宅では、設置型ボックスによる利便性の高さが評価されています。
マイクロフルフィルメントセンター(MFC)の導入
都市近郊に小型の物流拠点を設ける「マイクロフルフィルメントセンター(MFC)」も有効な手段です。倉庫から直接配送するのではなく、地域ごとに在庫を分散しておくことで、ラストワンマイルの距離を短縮できます。これにより、即日配送や時間指定への対応がしやすくなり、消費者満足度の向上にもつながります。
DX・自動化技術による効率化
AIによるルート最適化や、IoTを活用したリアルタイム配送管理も進んでいます。たとえば、天候や渋滞情報を自動で反映し、最短ルートを提示するシステムや、自動搬送ロボットによる倉庫内ピッキングなど、デジタル化が現場の生産性を支えています。これらの仕組みを導入することで、人的負担を減らしながら配送品質を維持できます。
外部物流パートナーの活用
自社で物流体制を整備するのが難しい場合、専門の物流パートナーを活用することも有効です。近年は、EC特化型のフルフィルメントサービスが増えており、在庫管理から梱包・配送までを一括で委託できます。コストを抑えつつ、高品質なラストワンマイル対応を実現できる点が大きな利点です。
まとめ:ラストワンマイル問題は物流変革のチャンス
ラストワンマイル問題は、単なる配送の課題ではなく、物流全体を見直すきっかけにもなっています。ドライバー不足や再配達の増加といった現場課題は、DXや共同配送などの新しい仕組みで改善できる可能性があります。企業にとっては、顧客体験の向上と業務効率化を両立するチャンスでもあります。
こうした中で、EC物流の分野でも温度管理や在庫最適化、スピード配送といったニーズが高まっています。パスクリエが提供する EC物流サービス『LogiPath』は、商品の特性に合わせた在庫管理・梱包・出荷をワンストップで支援する体制を整えています。
自社での改善が難しい場合や、物流業務の負荷を減らしたい場合は、まずは専門パートナーへの相談を検討してみてください。持続可能で効率的な物流を実現する第一歩になるはずです。

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